長沢芦雪は1754年生まれ。
江戸時代の中期に活躍した奇想の絵師です。
『写生の祖』と言われる円山応挙に弟子入りし、斬新な立体描写を学びました。
師・円山応挙の代わりに赴いた紀州で、わずか半年の滞在中に寺院の障壁画から民家の屏風にいたるまで、膨大な数の絵を描きました。
実際の虎よりも大きく描いた『虎図襖』(和歌山・無料寺所蔵)は重要文化財となっています。
また、3cm四方の極小サイズの紙に多数の羅漢を描いた『五百羅漢図』のような、独自の作風を追求した型破りな作品を多く残しました。
今回、『新美の巨人たち』(テレビ東京)で、長沢芦雪が生み出した『ゆるかわ』な子犬絵グッズの人気が高まっていることを取り上げます。
日ごろ、日本画になじみのない、現代の人々の心をも魅了する長沢芦雪について調べてみました。
長沢芦雪の魅力とは?
長沢芦雪という雅号は、師・円山応挙に弟子入りしてから名乗るようになりました。
「芦花両岸の雪、煙水一江の秋」という禅語の一部に由来すると考えられており、「河辺に咲く真白な芦の花と川の両岸に積もる雪、どちらとも見分けがつかない程の白一面」という意味合いがあります。
師・円山応挙の多くの弟子たちは町人であったのに対して、長沢芦雪は異色の下級武士出身でした。
長沢芦雪のあふれる才能を見出した師・円山応挙は、古くから親交のあった愚海和尚(和歌山・無量寺)のもとへ、当時33歳であった長沢芦雪を遣わせます。
多くの兄弟子を飛び越した異例の抜擢により向かった南紀で、長沢芦雪は一気に才能を開花させ、数多くの力作を残しました。
師・円山応挙の高度で緻密な作風を身につける、卓越した描写力に加え、奇抜な着想と大胆な構図を駆使し、自由奔放で独特な筆致が魅力の長沢芦雪は『奇想の画家』とも言われています。
【あす放送】新美の巨人たち 「長沢芦雪のゆるかわ子犬」×本仮屋ユイカ テレビ東京で10月14日(土)22時~。
緻密な画風から「ゆるかわ」へ。芦雪の転機の秘密を探りに、和歌山県串本町の無量寺を訪ねました。 https://t.co/0qbox6Q39N pic.twitter.com/DvK2scYd2H— 美術展ナビ (@art_ex_japan) October 12, 2023
長沢芦雪が描くゆるかわ子犬絵の魅力とは?
長沢芦雪は、白象、黒牛、虎など、様々な動物を描き、特に愛くるしい子犬の絵を多く残しています。
同じく芦雪の「一笑図」に、ほぼ同じ座り方の「ぃぬ」が描かれているので、たぶんお気に入りだったんだろうな。 pic.twitter.com/NneazAvqNk
— 加藤マニ (@katomani) July 2, 2020
師・円山応挙の『子狗之図』と長沢芦雪の『薔薇蝶狗子図』の子犬たちのゆるかわな雰囲気はよく似ていますが、円山応挙の筆致は、毛の一本一本まで緻密に描かれた愛らしさに対して、長沢芦雪の子犬は、筆遣いが大胆で表情やポーズものんびりとしています。
会場で、応挙の「狗之子図」を鑑賞するお父さんに抱かれて眠る赤ちゃんの顔が、画中の子犬の寝顔と完全に一致で萌えしんだ。#長沢芦雪展 pic.twitter.com/k4gElwocU1
— Shaku Shio (@shakushio) October 15, 2017
長沢芦雪『薔薇蝶狗子図』1794-1799年頃 愛知県美術館 pic.twitter.com/4tGJcttMMU
— 美術ファン@世界の名画 (@bijutsufan) February 13, 2021
また、長沢芦雪の絵画には遊び心があふれており、屏風絵は閉じた状態から完全に開くまでに様々なトリックを仕掛けて、観る人々を楽しませました。
『象背戯童図(ぞうはいぎどうず)』や『白象黒牛図屏風(はくぞうこくぎゅうずびょうぶ)』では、ちょこんと座った白い子犬や黒いカラスが描かれた絵画と思わせて、完全に開くと、画面からはみ出した巨大な象や牛の図体を強調するような構図に驚かされるという、おもしろさが隠されています。
可愛らしさやトリックに思わず笑ってしまうような、200年の歴史を超えて通じるユーモアが感じられます。
長沢芦雪のゆるかわ子犬絵グッズの人気とは?
葛飾北斎、尾形光琳、伊藤若冲などの著名人に限らず、最近では日本各地で活躍した江戸時代の絵師たちの作品が掘り起こされ、紹介される機会が多くなりました。
『江戸絵画展』は日本各地で開催され、人気を集めています。
長沢芦雪も江戸絵画の120人の名絵師として美術館ガイドに取り上げられ、『龍虎図』の虎や『芦雪犬』がゆるかわなグッズとして販売されています。
A4サイズのポスターや壁掛けのタペストリーは、長沢芦雪の代表作の絵画が多く用いられています。
Tシャツやスマホカバー、フィギュアやぬいぐるみの多くは、ゆるかわな子犬がグッズとして商品化され、人気となっています。
200年余りの歴史の重みと、ゆるかわな子犬のもふもふ感に癒される現代人に愛され、人気を呼んでいるのでしょう。
ゆるかわグッズは、絵画を所蔵・展示する美術館でも購入できますが、Amazonや楽天などの通販サイトから気軽に購入することができます。
長沢芦雪の魅力についてまとめ
長沢芦雪の画風は、快活で明るく、ユーモラスな特徴がありますが、晩年は時折『山姥』のようなグロテスクで畏怖の念を抱く印象の絵もあり、晩年期における長沢芦雪の心境の変化について、様々な憶測を生んでいます。
長沢芦雪、狗子や写実的ではない虎など、とにかくかわいいイメージが強いけど、晩年は山姥とか描いてて結構怖い。 pic.twitter.com/lHT5I08vWt
— 1967 (@Elogio_de_la_) November 25, 2022
長沢芦雪は1799年に大阪において46歳で客死します。
奇才の持ち主でありながら、奔放で傲慢な振る舞いによる破門説や様々な噂があります。
師・円山応挙の死後、長沢芦雪の悪評は表面化し、
“おのれひとりと慢心して、画は悪くなる一方でとうとう食い詰めて大坂で首をくくった”
という噂や
“淀藩主の寵愛ひとかたならぬ上、我が儘な振る舞いが多く、藩の者に毒殺された”
など、口伝風評がいくつもあり、死因については謎に包まれています。
一方で、師・円山応挙さえ超える異才ぶりを発揮する長沢芦雪は、馬術・水泳・剣術・音楽と多趣味多芸の一面をもち、独楽(こま)の曲芸も得意だったと言われています。
禅僧や文人との交流も深く、長沢芦雪は絵画だけではなく、人柄も重厚で魅力的であったことがうかがえます。
生誕270年を迎え、長沢芦雪の魅力を語り継ぐゆるかわ子犬絵グッズの人気を応援していきましょう!
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